間違った診断
 
 自分の診断が間違っていた(あるいは患者が納得しなかった)ケースがあったかどうか、しっかり把握できている医師はどの位いるでしょうか。以前私は、病院で「風邪」と診断され、出された薬を飲んでも症状がよくならなかった時、「だめだ、こりゃ」と病院を変えていました。風邪の診断は3つめの病院で、「脳腫瘍」に変わり、結局は大学病院へ入院する事態となりました。一番初めにかかった先生にしてみれば「よしよし、あの薬で治っただろうな」と思っていたでしょうし、大学病院へ入院した私にしてみれば「どこが風邪だよ!」ということになり、両者の間で認識が大きくずれていたと思います。
 その一方、私自身に反省すべき点もあると思っています。はじめに通った病院でこそ、私は再診してもらうべきであったと感じるのです。抗生物質が処方されても熱が下がらなかったことを報告すれば、最初の病院で事の重大性に気がついてもらえたかもしれません。正しい診断が出るまで、患者と医師が向かいあうべきであったと、今は思っています。
 当時、私が病院を変えた理由は「医師が診断を間違うはずがない」という期待があったからです。これは、多くの患者さんが持っている感情ではないでしょうか。医師への尊敬の裏返しでもあるのですが、「診断がつかない」(間違っている)と、病院や医師に裏切られたように感じてしまいます。
 医者ができることは、「処方した薬が効かなかった場合にどうするか」をしっかり患者に伝えることでしょう。あるいは、同じ症状で別の病気の可能性があれば、その情報を患者に伝えることが重要だと思います。初診は、関係づくりの第一歩に過ぎず、そこから病気を治すために、医者と患者が向き合う関係づくりが始まるべきだと思うのです。
 医師の診断を、患者がどう思ったか、当の医師が知らないままであるという事が、危険だと考えます。「診断し、治療に同意してもらい、病気の完治をめざす」ことが医療行為であるのなら、患者が診断をどう受け止めたかを報告することが患者の義務であり、患者の理解を確認することが医者の義務であると思っています。
医療について考えた
2006年9月4日月曜日